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東京地方裁判所 昭和63年(特わ)1644号 判決 1988年11月14日

主文

被告人山口昭造を懲役一年及び罰金二〇万円に、被告人池田謙一郎を懲役一年に処する。

被告人山口昭造においてその罰金を完納することができないときは、金四、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人池田謙一郎に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人山口昭造は、食用肉の販売を目的とする日東産業株式会社(本店所在地、福島県郡山市富久山町八山田字山神久保九番地一一)の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであり、被告人池田謙一郎は、同会社の取締役として食用肉の顧客への納入及び代金の集金等の業務に従事していたものであるが、被告人両名は、共謀の上、法定の除外事由がないのに

一  昭和六二年五月二八日ころ、東京都葛飾区西水元六丁目二三番一〇号所在の株式会社東京グリーンパークにおいて、マルヨミート第一興業株式会社(代表取締役、吉原徹)に対し、へい死した牛の肉約二、二〇〇キログラムを代金一三二万円で食品として売り渡し

二  同年一〇月三一日ころ、埼玉県川口市領家三丁目一七番二五号所在の株式会社清水屋畜産(代表取締役、清水義一)川口工場において、同会社に対し、へい死した牛の肉約三、三六〇キログラムを代金一九八万八、九〇〇円で食品として売り渡し

三  同日ころ、千葉県松戸市八ケ崎字池ノ上九五五番地所在の常盤冷蔵株式会社(昭和六三年四月三〇日以降は千葉県食品流通センター株式会社に社名変更)において、飯島健二に対し、へい死した牛の肉約一、五〇〇キログラムを代金七五万円で食品として売り渡し

四  昭和六三年七月五日ころ、東京都足立区入谷九丁目一六番二五号所在の成協運輸株式会社足立営業所において、大新食肉株式会社千葉営業所長鈴木健治に対し、へい死した牛の肉約二、九一〇キログラムを代金二三二万八、〇〇〇円で食品として売り渡し

五  同月六日ころ、群馬県桐生市広沢町間ノ島四〇一番地所在の有限会社ミートセンターふじよしや広沢工場において、前記鈴木健治に対し、へい死した牛の肉約一、三三五キログラムを代金一〇五万四、六五〇円で食品として売り渡し

もって、へい死した獣畜の肉を食品として販売したものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人両名の判示所為は、包括して刑法六〇条、食品衛生法三〇条一項、五条一項に該当するところ、被告人山口昭造については、情状により同法三〇条二項を適用して、所定の懲役と罰金を併科し、被告人池田謙一郎については所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期及び金額の範囲内で、被告人山口昭造を懲役一年及び罰金二〇万円に、被告人池田謙一郎を懲役一年にそれぞれ処し、被告人山口昭造においてその罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金四、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置し、被告人池田謙一郎に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人両名が、共謀の上、昭和六二年五月二八日ころから昭和六三年七月六日ころまでの間、主として食肉販売業者らに対し、合計約一万一、三〇五キログラムのへい死獣畜肉を代金合計七四四万一、五五〇円で食品として販売したという事案である。関係証拠によると、被告人山口は、昭和六〇年七月ころから知り合いの食肉ブローカー吉原徹にへい死した牛の肉を販売するための資金を提供して利益を得ていたこと、その後昭和六一年四月からは、被告人池田にもちかけ、同人を雇い入れて自己経営の会社名義で本格的にへい死した牛の肉の仕入れ販売を業とするようになっていたことが窺われる。食品衛生法の趣旨を踏みにじり、有害かつ危険なへい死獣畜肉を長期間にわたり販売し続けた被告人らの犯情はよくなく、とりわけ特段の罪障感もなく、代表取締役として長期間違法な営業を続けてきた被告人山口の刑事責任は重いというほかない。したがって、同被告人に対しては、その家庭の状況、年齢、反省の態度などを斟酌しても執行猶予を付するのは相当でない。また、被告人池田は、本件犯行において相当に重要な役割を果たしていたものではあるが、実質的には被告人山口の使用人として犯行に加担したものであって、得た利得も比較的少なく、相当な年齢に達する現在までさしたる前科もないことなどを考慮して、刑の執行を猶予するのが相当であると思料した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告人山口昭造につき懲役一年六月及び罰金二〇万円、被告人池田謙一郎につき懲役一年)

(第二審判決は、高等裁判所刑事判例集四二巻二号一三七頁以下に登載)

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